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酔狂市街戦のあらすじ感想レビュー|ダメな自分でも生きてていいと思わせる一冊!

気がつくと見慣れた街角が戦場に!今回ご紹介するのはそんなブラックユーモア小説です。「酔狂市街戦」は戌井昭人氏によって2016年の8月10日に扶桑社から刊行されました。「芥川賞5回落選!」と帯にデカデカと書いてあるのに惹かれて手にとった一冊です。

酔狂市街戦のあらすじ

「酔狂市街戦」のネタバレあらすじです。

大学のジャズ研究会で意気投合したタダオとクモさんはお酒を飲んでばかりで、勉強にもサークルにもさっぱり身が入りません。

新宿のライブハウスに出入りしていた時に、普段は運送会社のドライバーとして働いている三太と知り合いました。

それぞれが自由気ままに演奏していたタダオたちは、のり坊という少年を加わえてプロのミュージシャンとしてデビューします。

学生時代と同じくタダオはベース、インストゥルメンタルにこだわるクモさんはサックス、カルロス・サンタナに憧れている三太はギター、若干18歳ながら超絶的なテクニックを持つのり坊はドラム。

結成当初は注目されて小さなミュージックフェスティバルに呼ばれたり、自主制作でリリースしたCDが高評価されたりとそれなりに順調でした。

しかし、4年目を迎えてからはライブの客入りが悪くCDの売れ行きも不調で、このままではバンド自体が自然消滅してしまうかも。

そして、一発逆転を狙うために地方への演奏ツアーを決行します!

そしてみんなが巻き込まれていく、予想外のトラブルとは!?

酔狂市街戦で考えさせられる現代社会

九州地方から出発して中国地方、広島を経由して岡山、大阪を越えるといよいよ最終目的地の京都へ入ります。

東京での音楽活動に早々と見切りを付けた4人が、ゆっくりと時間をかけて北上していく様子には軍隊の行進を思わせます。

道中でふらりと立ちよったのは、駐屯地のような建物でひっそりと営業を続けている焼肉屋さんです。

店内のテレビからはアフリカの小さな街で内戦が始まったというニュースが映し出されていますが、誰ひとりとして関心を払うことはありません。

遠い国や地域への無関心が、今の世界の分断や格差を生んでいるという指摘には考えさせられました。

自身と重ね合わせてみると

行く先々で酔っ払って大騒ぎをするのが大好きなタダオとクモさん、いつも物静かでマンガばかり読んでいるのり坊。

こんなひと癖もふた癖もあるバンドメンバーたちをしっかりと纏め上げて、リーダーシップを発揮しているのが三太です。

地方への巡業に繰り出した際には、運送屋の配達員としてのキャリアを活かして自ら移動用ワゴンのハンドルを握る誠実さには感心します。

仕事と趣味のバランスをとりつつ、自分のやりたいことにトコトン没頭していく充実した生き方を見習いたいとも思うのです。

読んでいると「ボンクラでも生きていてもいいんだよ」と作者が私にポンと投げかけて来る、そんな気がします。

酔狂市街戦の感想

京都・北白川の丘の上の高級住宅街にあるギャラリーでコンサートを無事に終えたメンバーたちが、下鴨神社の路地裏へと打ち上げに繰り出すあたりから幻想的な雰囲気が漂い始めていました。

タダオがケースにしまって背負っているベースはライフル、クモさんが長年にわたって愛用しているサックスはマシンガン。

のり坊が紙袋に入れてぶら下げているドラムスティックも、立派な武器に早変わりしていて驚かされます。

見えない敵と戦う羽目になった一向が、遂には本格的な市街戦へと突入していくシーンが圧巻です。

表紙の絵は「何故ギターが火を噴いてるんだろうか?」と最初は疑問に思いながら読みましたが、その通りの意味で面食らいます。

ボンクラな人々のどうしようもなくグダグダとした感じが、読んでいると何処か愛すべき人だと思えてくる。

いい意味で『酔狂市街戦』は物凄くくだらない内容で、とても印象に残る作品です。

少し物足りないのはなぜ?

現実から目を背けるかのようにアルコールに溺れるタダオやクモさんに、生真面目な三太が怒りを爆発させてしまうのは無理もありません。

一方では仲間たちを見捨てるかのように三太がツアーを離脱して、勝手に東京に帰ってしまう後半の展開は少し物足りないです。

せっかくの鋭いツッコミ役がいなくなってしまったために、残された3人では珍道中の味わいが薄れていきます。

いっそのこと追加メンバーを募集するとか、スリーピースバンドに路線変更するのも面白かったのではないでしょうか。

まとめ

【酔狂市街戦のあらすじ感想レビュー|ダメな自分でも生きていていいと思わせる一冊!】の感想文をまとめました。

「酔狂市街戦」は内容とか文章がではなく、どこか何かが優しいのです。好き嫌いがある作品だと思いますが、是非一度、手にとって読んでみてください。

「読書好き50代主婦の感想文」でした。