日本の小説

本「48億の妄想」あらすじ感想!50年前に現代の情報社会を予知した作品?

今から50年以上も前に情報社会の到来を予言したSF小説をご存じでしょうか?「48億の妄想」は筒井康隆氏によって1965年の12月に早川書房から刊行されました。衝撃的なプロローグから始まり、現代社会を予知したような内容に驚きます。

48億の妄想:あらすじネタバレ

全国ネットのキー局「銀河テレビ」で5年ほどディレクターをしている折口節夫は高収入かつ高学歴。

おまけに背が高くてなかなかの好男子ですが結婚はしていません。

担当している番組の視聴率がこのところ伸び悩んでいるために、上司からは何かにつけて嫌味を言われていました。

ある時に大物政治家・浅香の葬儀の模様を実況するために、アナウンサーやADと一緒に機材を満載した中継車で現場まで乗り込みます。

遺族から親戚一同、選挙事務所のスタッフや熱心な支持者、浅香とはライバル関係にあっていがみ合っていたはずの大臣。

多くの参列者が泣き叫んでいましたが、会場に至るところに取り付けられている小型カメラを意識しての当然の行動です。

モニターを確認していた折口は、ひとり娘の暢子がまったくの無表情で涙さえ流していないことに気が付き、式が終わった後で声をかけてふたりっきりで会ってみます。

テレビカメラに映るものがすべてだった折口は、暢子と逢瀬を重ねていくにつれて少しずつ心変わりをしていきますが…

48億の妄想を読んで感じたこと

オープニングからとにかく衝撃的です!

目黒区清水町でタバコ屋を営みながら暮らしている6人一家の自宅兼店舗に、大型ダンプカーが突っ込んでくるのです。

次の日の朝には、その事故はニュース・ショーで特ダネスクープとして取り上げられています。

しかし、同じ事件を報道しているはずなのに、各局の報道がバラバラなのが印象的です。

手の込んだセットとVTRで再現する局、人気のコメンテーターを数多く起用する局、病院に搬送されたばかりの被害者を生出演で引っ張り出す局。

人びとの関心を呼び起こすための競争が過熱すると、真実を伝えるという報道本来の目的が失われてしまうことを実感しました。

48億の妄想から学んだこと

現実でも選挙の予想と勝敗は競馬のようにスポーツ化し、裁判の一部始終が実況中継されて法廷ドラマ化され、有名人のお葬式でさえも見世物ショー化されている気がします。

テレビがすべての価値を左右している世界の中でも、主人公の折口のように自らの強靭な意志を信じて行動する者もいて勇気をもらえました。

誰しもがカメラを意識して喜怒哀楽を表現する中でも、自由気ままに振る舞うヒロイン・浅香暢子のような生き方も見習いたいと思います。

48億の妄想で驚いたこと

無線式の映像送受信機「カメラ・アイ」が有名人の自宅に配置されているのが当たり前となった、近未来が舞台になっています。

街中に監視カメラが設置されて通行人が手持ちのスマートフォンで動画を撮影して、即座にインターネット上にアップロードされる21世紀そのものと言えるでしょう。

テレビ映りが良いという理由だけで任命された「陳列用大臣」、さらには「ホームラン王の松井」といったキャラクターまで登場するのは驚きでした。

何にせよ、この作品が50年以上も前のものだという事に驚きです。

作家、筒井康隆氏の予言のような想像力と取材力にも感服します。

48億の妄想で少し残念だったところは?

昨日までの無名人が次の日の朝には有名人として祭り上げられていく、メディアの軽薄さを上手く指摘していました。

その一方では「1億総タレント」などという1960年代に流行したフレーズは、若い読者からするといまいちピンとこないのが難点です。

また、済州島の近海で日本の漁船が韓国警備艇から銃撃を受けたために、折口たちが突撃取材を敢行するシーンも後半には用意されています。

隣国との国境問題に鋭く切り込んでいますが、この辺りは今の国際問題や隣国との関係もあるので微妙にそぐわないと思うところもあります。

まとめ

【本「48億の妄想」あらすじ感想!50年前に現代の情報社会を予知した作品?】と題してまとめました。

50年前に書かれた内容とは思えないほど、現代の情報社会にマッチした作品です。

報道の真実とは?と考えさせられる作品で、いつも見ているテレビやSNS情報を違う視点からみるきっかけになった作品です。

是非、じっくり読んでみてくださいね!

「読書大好き50代主婦の感想文」でした。